夏祭りの雰囲気を写真に残したいけれど、人が多くて撮影しづらい…そんな悩みを抱えているカメラ初心者の方も多いのではないでしょうか。実は、夏祭りには「エモい」写真を撮るための絶好の条件が揃っています。提灯の温かな光、シルエットになる人々、そして祭りならではの活気ある雰囲気。今回は、肖像権に配慮しながら、夏祭りで印象的なスナップ写真を撮る方法をご紹介します。
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「スナップ写真の撮り方|構図・光・視点で変わる日常の切り取り方」シリーズの前回記事はこちら↓

夏祭りスナップ撮影で意識すべき3つのポイント
夏祭りでの撮影は、通常のスナップ撮影とは異なる特別な配慮が必要です。人が多く集まる場所だからこそ、マナーを守りながら撮影することが重要になります。
①肖像権への配慮:人の顔を写さない撮影テクニック
夏祭りで最も重要なのが肖像権への配慮です。特に子供の撮影には細心の注意が必要です。肖像権侵害を避けるため、以下のテクニックを活用しましょう。

広角レンズ + スローシャッター活用法
広角レンズでスローシャッターを使用することで、人の動きをぼやかし、顔が特定できない状態にできます。
- シャッタースピード:0.6秒〜1/60秒
- 絞り:F4〜F8(被写界深度を確保)
- ISO:800〜1600(手ぶれを防ぐため)

望遠レンズで映り込みを限定的に
望遠レンズを使用することで、物理的に写る範囲を限定し、余計な映り込みを削除できます。SEL70200GM2のような望遠ズームレンズは、人混みの中から特定の被写体だけを切り取るのに最適です。
望遠レンズでは被写界深度が浅くなるため、背景をぼかして人物のシルエットだけを浮き上がらせることが可能!
②提灯と照明を活かした光の演出
夏祭りの魅力的な光源である提灯は、写真撮影において非常に有効な照明として活用できます。
提灯の温かな拡散光を活用
日没後、提灯から放たれる赤オレンジの光は、自然な拡散光として機能します。この光を活用することで、夜のポートレート撮影でも顔が自然に明るく写ります。
- WB(ホワイトバランス):電球色(3000K前後)または太陽光
- 露出補正:-0.3〜-0.7EV(雰囲気を重視)
- 測光モード:スポット測光で提灯の明るさに合わせる
逆光を利用したシルエット撮影
提灯や屋台の照明を意図的に逆光として利用することで、人々を美しいシルエットとして撮影できます。これにより、肖像権の問題を回避しながらドラマチックな写真が撮れます。
- 露出:背景の明るさに合わせて測光
- フォーカス:シルエットになる被写体のエッジに合わせる
- 構図:提灯や照明を背景に配置

③祭りを楽しむ人を最優先にしたマナー
夏祭りは多くの人が楽しみにしているイベントです。撮影者として、参加者の迷惑にならないよう配慮することが重要です。
流れを止めない撮影スタイル
人が多い祭り会場では、撮影マナーを守ることが重要です。以下の点に注意しましょう:
- 長時間の立ち止まりや場所の占有は避ける
- 三脚や自撮り棒の使用は控える
- 人の流れを妨げない位置での撮影
- フラッシュの使用は極力避ける
相手の気持ちを尊重する撮影
カメラを向けられることを嫌がる様子が見られたら、すぐに撮影を中止し、できれば謝罪することが大切です。
「撮らせていただく」という謙虚な気持ちを忘れずに。祭りは参加者が主役(1番)であり、撮影者は2番の存在であることを意識して!
機材選択と設定のポイント
今回使用した機材構成
実際の撮影で使用した機材と、それぞれの特性を活かした撮影方法をご紹介します。
FUJIFILM X100V(麻布台ヒルズ・上野夏祭り)
- 固定焦点レンズ(35mm換算)で自然な画角
- コンパクトで目立ちにくい
- 優秀な高感度性能で夜間撮影に最適
Sony α7IV + SEL70200GM2(全会場)
- 望遠ズームで人混みの中から被写体を切り取り
- 手ぶれ補正機能で夜間の手持ち撮影が可能
- 高解像度で細部まで美しく描写
Sony α7IV + SEL24F14GM(全会場)
- F1.4の明るいレンズで暗所での撮影に有利
- 24mmの広角で祭りの雰囲気を広く切り取り
- 浅い被写界深度で背景をぼかした撮影が可能





夜間撮影の基本設定
ここで、夏祭りの夜間撮影では、以下の設定を基準に調整します:
- ISO感度:800〜3200(機材の性能に応じて調整)
- 絞り:F2.8〜F5.6(被写界深度と光量のバランス)
- シャッタースピード:1/60秒以上(手ぶれ防止)
- フォーカスモード:AF-C(コンティニュアスAF)

実践的な撮影テクニック
構図の作り方
夏祭りでの印象的な構図を作るポイントをご紹介します。


前景・中景・背景を意識した構図
提灯を前景に配置し、人々を中景、屋台や建物を背景にすることで、奥行きのある写真が撮れます。
光と影のコントラストを活用
明るい提灯と暗い部分のコントラストを意識することで、ドラマチックな印象を与えることができます。



色調整のポイント
夏祭りの「エモい」雰囲気を出すための色調整のコツ:
- オレンジ系の色温度で温かみを演出
- ハイライトを抑えて提灯の白飛びを防止
- シャドウを持ち上げて暗部の詳細を見せる
- 彩度を適度に上げて祭りの華やかさを表現
撮影スポット別のアプローチ
麻布台ヒルズ 納涼祭り
モダンな建築と伝統的な祭りのコントラストを活かした撮影が可能です。高層ビルを背景にした提灯の配置が印象的な写真を生み出します。これは、街を上げてのお祭りというより、イベントといった感じが強いです。小さな出店がいくつかあり、都内のビル街でも夏祭り感は感じれます。

うえの夏まつり
風鈴と提灯が織りなす涼やかな雰囲気が特徴。風で揺れる風鈴をスローシャッターで表現することで、動きのある写真が撮れます。

森林公園の夏まつり
そして、自然に囲まれた会場では、ここ最近始まった盆踊りを提灯の色と背景の緑や空の色彩対比を活かした撮影がおすすめです。

撮影後の現像・編集のコツ
RAW現像での「エモい」仕上げのポイント:
- 色温度調整:3000K〜3500Kで温かみのある色調に
- ハイライト/シャドウ:ハイライト-20〜-40、シャドウ+20〜+40
- 彩度・自然な彩度:自然な彩度+10〜+20で自然な発色に
- 明瞭度:-5〜-15で柔らかな印象に
- 粒状感:フィルムライクな質感を演出
エモさを演出するなら、フィルムライクになるぞ。なので、明瞭度が低くピン甘のように見え、粒状を加えることで、画質は悪い見栄えだが、しっかりとエモさを演出する効果が加えられると思う。
まとめ|夏祭りで心に響く1枚を撮るために
夏祭りでのスナップ撮影は、技術的なテクニックだけでなく、マナーや配慮も重要な要素です。肖像権に配慮し、祭りを楽しむ人々を尊重しながら、提灯の美しい光を活かした「エモい」写真を撮ることができます。
特別な機材や場所がなくても、身近な夏祭りで印象的な写真は撮れます。今回ご紹介したテクニックを参考に、あなたも夏祭りの魅力的な瞬間を写真に残してみてください。
撮影技術も大切ですが、何より祭りの雰囲気を楽しむことが一番。リラックスして撮影に臨めば、自然と良い写真が撮れるはず?