カメラを買って1か月、日中の撮影にも慣れてきたら、次に挑戦したいのが「星空撮影」ではないでしょうか。満天の星空や天の川を自分のカメラで撮影できたら、写真の世界がさらに広がりますよね。
でも「星空撮影って難しそう」「何を準備すればいいの?」「カメラの設定がわからない」と不安に思う方も多いはず。実は、基本的な設定と準備さえ押さえれば、初心者でも美しい星空写真が撮れるんです。
この記事では、実際に山梨県・富士山麓で撮影した経験をもとに、星空撮影に必要な装備・事前準備・カメラ設定・撮影方法まで、初心者向けにわかりやすく解説します。
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今回の撮影ロケーション|富士山麓「全国育樹祭記念広場」
今回の星空撮影は、山梨県にある「全国育樹祭記念広場」で行いました。ここは星空撮影に最適なスポットです。
全国育樹祭記念広場の魅力
- アクセス: 東京から車で約2時間
- ロケーション: 広大な広場で、正面には富士山が大きく見える絶景スポット
- 標高: 約1200m。標高が高いため空気が澄んでおり、星がクリアに見える
- 光害: 周囲に街灯が少なく、光害の影響を受けにくい

標高が高く空気が澄んでいるため、都心では見られないような満天の星空を楽しめます。広場なので撮影場所も広く、三脚を立てるスペースも十分にあります。
星空撮影に必要な機材・装備リスト
星空撮影は、スナップ撮影とは違って準備がとても重要です。まずは必要な機材と装備を確認しましょう。
【最低限必要な撮影機材】
今回使用した機材はこちらです。
- カメラ本体: ソニー α7IV(フルサイズミラーレス一眼)
- レンズ: SEL24F14GM(広角レンズ・F1.4の明るいレンズ)
- 三脚: 必須アイテム。脚が太くしっかりしたものを選ぶ
この3つが最低限の装備です。特に三脚は絶対に必要。星空撮影では長時間露光(シャッターを長く開ける)するため、カメラをしっかり固定する必要があります。また、下記2つがあるとより印象的な星空風景を撮ることができます。
- 光害カットフィルター: 都市部の光害を軽減
- ソフトフィルター: 星の光を柔らかく表現
【中級者向け・星単体を狙う場合の追加機材】
星をより大きく、クローズアップして撮影したい場合は、以下の機材も揃えるとさらに表現の幅が広がります。
- 望遠レンズ: SEL70200GM2(星を大きく写せる)
- ポータブル赤道儀: 星の動きに合わせてカメラを動かし、長時間露光でも星を点で写せる
- クロスフィルター: 星を十字の光条で表現できる

赤道儀を使った撮影は少し難易度が上がるので、まずは広角レンズと三脚だけで星景写真(風景と星を一緒に写す写真)に挑戦するのがおすすめです。
星空撮影の前準備|準備が成功の9割を決める
星空撮影は、ふらっと出かけて撮れるものではありません。事前準備をしっかり行うことが、成功への近道です。
①撮影機材の準備とメンテナンス
- レンズの掃除: 夜間のレンズ交換は難しいので、事前にしっかり掃除しておく
- 電池の確認: 赤道儀やヘッドライトは電池式が多いので、残量を確認して予備電池も持参。カメラは低温環境下では電池の減りも早いので予備を持っていきましょう。
- SDカードの空き容量: 長時間撮影するので、容量に余裕を持たせておく
②防寒・登山準備
山中での撮影は、想像以上に寒くなります。防寒対策は万全に。
- 夏でも長袖は必須(標高が高い場所は夏でも夜は冷える)
- 秋冬は真冬装備が必要
- 足に張るカイロ
- 靴下二重履き
- 3枚重ね着(インナー+フリース+ダウンコート)
- パーカー(頭を寒気から守る)
- カメラ用手袋(指先が出せるタイプが便利)
- 熊鈴の装備: 最近の熊襲撃のニュースもあるので、安全対策として携帯
- 履きなれた靴: 夜の山道は危ないので、滑りにくい靴を選ぶ
最低でも1時間はそこにいるので、耐えうる準備をしておこう。
③時間をつぶせる娯楽の準備
星空撮影は長時間露光のため、1枚撮るのに30秒ほどかかります。撮影の合間にリラックスできるよう、準備しておくと快適です。
- Amazonプライムのオフライン視聴: 事前にダウンロードしておく
- 大きめの折り畳み椅子: コールマンなどのアウトドア用椅子で星を観察しながら撮影
- 温かい飲み物:
- 魔法瓶に熱湯を入れ、タオルでくるんでビニール袋に入れて保温
- 保温コップとインスタント飲み物(コーンスープなど。コーヒーはトイレが近くなるので非推奨)
④天気予報の確認
星空撮影で最も重要なのが天気です。晴れていても雲が多いと星が見えません。以下のサイトを活用しましょう。
- 月齢の確認: 新月を中心に前後1週間なら問題なし(満月だと明るすぎて星が見えにくい)
- tenki.jpの星空指数: その日の星空の見えやすさを確認
- GPV気象予報: 細かな雲の動きを時間単位で確認できる
tenki.jp 星空指数では、その日の星空の見えやすさが地域ごとに表示されるので、撮影の可否判断に非常に便利です。また、GPV気象予報を使えば、雲の動きを予測して「この時間なら晴れそう」という判断ができます。
⑤撮影スポットの決定
- 車で直接行けるスポットがおすすめ: 徒歩で何十分も歩く場所は、装備の関係でとても大変
- 光害の影響が少ない場所を選ぶ:光害マップも参考にする
- 東京なら奥多摩
- 関東なら栃木、長野あたりがおすすめ
光害マップを確認すると、日本全国の光害状況が色分けされて表示されます。できるだけ暗い(光害が少ない)エリアを選びましょう。
⑥明るいうちに到着しておく
撮影場所には、日没前に到着するのがベストです。
- 歩ける道、撮影する場所、構図の確認は明るいうちにロケハンしておくと安全
- 今回は16:30くらいに到着し、事前準備を開始(日の入りは17:45くらい)
星空撮影のカメラ設定|初心者向け基本設定
それでは、実際の撮影方法とカメラ設定を解説していきましょう。今回は初心者向けに、三脚・カメラ・広角レンズだけで撮影する方法をご紹介します。
Step1: カメラの基本設定を変更する
まず、カメラを以下のように設定します。
- フォーカスモード: AF(オートフォーカス)からMF(マニュアルフォーカス)に変更
- 撮影モード: M(マニュアルモード)に変更
- 初期設定:
- シャッタースピード: 10秒
- F値: 開放(レンズの最小F値。例: F1.4、F2.8など)
- ISO感度: 3000くらい
- 手ブレ補正機能: OFF(三脚使用時は逆に手ブレの原因になる)
- ノイズ除去機能: OFF(撮影後の処理で対応)
- セルフタイマー: 2秒に設定(シャッターを押す振動を防ぐ)
Step2: ざっくり構図を決めてテスト撮影
カメラのモニターを確認しながら、ざっくり構図を決めて、いったん撮影してみます。
この段階では、明るすぎる(または暗すぎる)、かつピントの合っていない写真が撮れるはずです。これは正常なので、ここから調整していきます。
Step3: シャッタースピードとISO感度を調整
テスト撮影の結果を見て、明るさを調整します。
- F値は開放のまま(レンズの最小F値から変更しない)
- シャッタースピードとISO感度で明るさを調整
シャッタースピードの目安|500ルール・600ルール
星空撮影では、シャッターを開けすぎると、地球の自転によって星が線状に写ってしまいます。星を点として写すためには、「500ルール」または「600ルール」を参考にしましょう。
500ルール: 500 ÷ 焦点距離 = シャッタースピード(秒)
例えば、24mmのレンズを使用する場合:
500 ÷ 24 = 約20秒
つまり、24mmレンズでは20秒以内のシャッタースピードなら、星が点として写ります。詳しくはこちらの記事で解説されています。
こういうロジックもあって星空を撮るには16mm~20mmくらいが最適とも言われているよ。
Step4: ピントを合わせる(最重要!)
星空撮影で最も難しいのがピント合わせです。暗闇ではAFが効かないため、MF(マニュアルフォーカス)で合わせます。
- モニターを見ながらピントを合わせる
- カメラのピーキング機能や、ピント拡大機能を活用し、星の形が一番シャープになるところを狙う
- 無限遠(∞)よりほんのちょっと手前くらいがベスト
- ピントが決まったら、マスキングテープなどでピントリングを固定してしまうのがおすすめ(撮影中に動いてしまうのを防ぐ)


Step5: シャッターを切る
設定とピントが決まったら、あとはシャッターを切るだけです。
- セルフタイマー2秒を使って、シャッターボタンを押す振動を防ぐ
- 撮影後、モニターで確認し、明るさやピントを微調整
何枚か撮影して、納得のいく1枚が撮れたら成功です!

フィルターの効果|光害カットフィルターとソフトフィルター
光害カットフィルター
都市部や山でも街灯の影響を受ける場所では、光害カットフィルターを使うことで、不要な光をカットし、星をより鮮明に写せます。


フィルターを使うことで、夜空の色がより自然になり、星の輝きが際立ちます。
ソフトフィルター
ソフトフィルターは、明るい星の光を柔らかくにじませ、星の色を際立たせる効果があります。タムロンの星空撮影ガイドでも、星景写真での活用が推奨されています。
中級編|比較明合成で星の軌跡を表現
星空撮影に慣れてきたら、比較明合成という手法で、星の軌跡を表現してみましょう。
比較明合成とは、同じ構図で何十枚も撮影した写真を、後処理で重ね合わせる手法です。星が動いた軌跡が線状に写り、幻想的な作品になります。

比較明合成専用のソフトウェア(無料・有料ともにあり)を使えば、簡単に合成できます。
まとめ|星空撮影は準備と設定が全て
星空撮影は、一見難しそうに見えますが、しっかりとした準備とカメラ設定を押さえれば、初心者でも美しい星空を撮影できます。
今回のポイントをおさらいしましょう。
- 撮影機材: カメラ、広角レンズ、三脚が最低限必要
- 防寒対策: 山中は想像以上に寒い。真冬装備で臨む
- 天気予報の確認: 月齢、星空指数、雲の動きをチェック
- 撮影スポット: 光害が少なく、車で行ける場所がベスト
- カメラ設定: マニュアルモード、MF、F値開放、シャッタースピード10〜20秒、ISO3000前後
- ピント合わせ: 無限遠よりほんの少し手前で、星が一番シャープになるところ
星空撮影は、何度も挑戦して経験を積むことで、どんどん上達していきます。最初はうまくいかなくても、諦めずに何度も撮影してみてください。満天の星空を自分のカメラで撮影できた時の感動は、何物にも代えがたいものがあります。
ぜひ次の新月の夜、星空撮影に挑戦してみてくださいね!














