デジタルカメラを選ぶとき、「APS-C」や「フルサイズ」という言葉をよく目にしませんか?これはカメラの「センサーサイズ」を表す重要な用語です。実はこのセンサーサイズ、写真の仕上がりや表現に大きく影響します。この記事では、カメラ初心者の方でも理解できるように、センサーサイズの基本とAPS-Cとフルサイズのそれぞれのメリットを解説します。
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センサーサイズとは?カメラの「眼」の大きさ
デジタルカメラの心臓部とも言えるのが「イメージセンサー」です。これは、レンズを通して入ってきた光を電気信号に変換し、デジタル画像として記録する重要な部品です。人間の目でいう「網膜」のような役割をしています。
このセンサーには大きさの違いがあり、主に利用されているのは以下の種類があります:
- フルサイズ:約36mm×24mm(35mmフィルムと同じ大きさ)
- APS-C:約23.6mm×15.8mm(メーカーによって若干異なる)
- マイクロフォーサーズ:約17.3mm×13mm
- iPhone 15 Pro:約9.8mm × 7.3mm(1/1.28インチ)

この記事では、最も一般的なAPS-Cとフルサイズのセンサーサイズについて詳しく解説していきます。
APS-Cとフルサイズの主な違い
1. 物理的なサイズの違い
APS-Cセンサーの面積は、フルサイズセンサーの約40%程度です。このサイズの違いが、写真の見え方や表現に大きく影響します。では、具体的に何が違ってくるのか見ていきましょう。
2. 画角の違い(クロップファクター)
同じレンズを使っても、APS-Cとフルサイズでは写る範囲(画角)が異なります。APS-Cではフルサイズと比べて「狭い範囲」が写ります。これは「クロップファクター」と呼ばれ、APS-Cでは約1.5倍(ニコン、ソニー)または約1.6倍(キヤノン)の焦点距離に換算されます。
例えば、50mmのレンズを使った場合:
- フルサイズでは:50mm相当の画角
- APS-Cでは:約75mm相当(50mm×1.5)の画角
同じレンズでも望遠に映るということは、遠くのものを撮りたいときにはAPS-Cのカメラを利用するのがいいね。


3. ボケ具合の違い
センサーサイズの違いは、写真の「ボケ」の量にも影響します。同じF値のレンズを使って、同じ条件で撮影した場合、フルサイズの方が背景のボケが大きくなります。これは、センサーサイズが大きいほど被写界深度(ピントが合って見える範囲)が浅くなるためです。
4. 高感度性能とダイナミックレンジの違い
センサーが大きいほど、1つの画素に当たる光の量が多くなります。そのため一般的に:
- 高感度性能:フルサイズの方がノイズ(ざらつき)が少なく、暗い場所での撮影に強い
- ダイナミックレンジ:フルサイズの方が明るい部分と暗い部分の両方をきれいに表現しやすい
「違い」なので記載していますが、現在の最新カメラ性能であれば、APS-Cでも十分に暗所性能が良い機種もある。「A3サイズに印刷する」「写真集を作る」などのよりよく表現するためであればフルサイズの方が自由度が上がる。
5. カメラ本体とレンズのサイズ・重量
センサーサイズの違いは、カメラやレンズの大きさにも影響します:
- APS-C:コンパクトで軽量なボディとレンズが多い
- フルサイズ:一般的に大きく重いボディとレンズが多い(ただし近年は小型化も進んでいます)
6. 価格の違い
センサーサイズの違いは価格にも直結します:
- APS-C:比較的リーズナブルな価格帯(ボディ、レンズともに)
- フルサイズ:一般的に高価な価格帯(特にレンズ)
APS-Cのメリット・デメリット
🌟 APS-Cのメリット
1. コンパクト&軽量
カメラ本体もレンズも小型軽量なので、長時間の撮影や持ち歩きに負担が少なく、旅行や日常使いに最適です。
2. コスト効率が良い
カメラ本体もレンズもフルサイズに比べると安価なので、初期投資を抑えられます。様々なレンズを揃えやすいのも魅力です。
3. 望遠効果がある
クロップファクターにより、同じレンズでもフルサイズより望遠効果が得られます。これは野鳥や野生動物、スポーツ撮影などに有利です。
4. 被写界深度が深い
ボケが小さめになる特性を生かして、風景撮影など広い範囲にピントを合わせたいシーンに適しています。
⚠️ APS-Cのデメリット
1. ボケが少ない
背景をぼかした撮影をしたい場合、フルサイズほど大きなボケを得るのが難しいです。
2. 高感度撮影での限界
暗所での撮影時、特に高感度設定では、フルサイズと比べてノイズが目立ちやすくなります。
3. ダイナミックレンジの制限
明暗差の大きいシーンでは、フルサイズほど幅広い明暗を一度に表現できません。
4. 広角レンズの制約
クロップファクターの影響で、超広角撮影がやや難しくなります。例えば、16mmレンズでも24mm相当になってしまいます。
フルサイズのメリット・デメリット
🌟 フルサイズのメリット
1. 美しいボケ表現
浅い被写界深度により、背景を大きくぼかした、立体感のある写真が撮りやすいです。ポートレート撮影などに有利です。

2. 優れた高感度性能
暗い場所でも、高ISO感度設定でもノイズが少なく、クリアな写真が撮れます。
3. 広いダイナミックレンジ
明暗差の大きいシーンでも、白飛びや黒つぶれを抑えて、豊かな階調表現が可能です。
4. 広角撮影に優れる
広角レンズの性能をフルに活かした広角撮影が可能です。
⚠️ フルサイズのデメリット
1. 大きさと重量
カメラボディとレンズが大きく重いため、長時間の撮影や持ち運びが負担になることがあります。
2. 高価格
カメラ本体もレンズも高価で、本格的なシステムを揃えるには大きな投資が必要です。
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3. 望遠撮影での不利
同じ焦点距離のレンズでは、APS-Cに比べて被写体が小さく写ります。望遠撮影には長焦点距離のレンズが必要で、さらにサイズや価格が大きくなります。
初心者はどちらを選ぶべき?
カメラ初心者の方は、以下のポイントを考慮して選ぶと良いでしょう:
APS-Cをおすすめしたい人
- これから写真を始める初心者の方
- コスト重視の方
- 小型・軽量を重視する方
- 旅行や日常使いがメインの方
- 野鳥や野生動物など、望遠撮影が多い方
フルサイズをおすすめしたい人
- ボケ味や高画質にこだわる方
- ポートレート撮影が多い方
- 暗所での撮影が多い方
- 風景写真など、ダイナミックレンジを重視する方
- 本格的に写真を学びたい方
APS-Cとフルサイズのレンズの互換性
センサーサイズの違いはレンズ選びにも影響します。基本的な互換性は以下の通りです:
- フルサイズ用レンズ → APS-Cカメラ:使用可能です。クロップファクター(約1.5倍)が適用されます。
- APS-C用レンズ → フルサイズカメラ:多くの場合、「クロップモード」になり、有効画素数が下がります。また、一部レンズでは使用できない場合もあります。
将来的にフルサイズへの移行を考えている場合は、最初からフルサイズ対応レンズを選ぶという選択肢もあります。ただし、フルサイズレンズはAPS-C用より大きく重いので、その点は考慮が必要です。
初めての方にはAPS-Cがおすすめ。レンズはAPS-Cで買ったものでもフルサイズ機で使えるは使えるので、ステップアップな移行が可能。ただ、注意点はあるのでよく考えて購入する必要がありますよ。
まとめ|自分に合ったセンサーサイズを選ぼう
APS-Cとフルサイズはそれぞれに長所と短所があります。結局のところ、「どんな写真を撮りたいか」「どんなシーンで使うか」という自分の撮影スタイルに合わせて選ぶのがベストです。
特に初心者の方は、コスト効率と扱いやすさからAPS-Cから始めるのが王道です。写真技術の向上に伴って、将来的にフルサイズへ移行することも可能です。
最も大切なのは、センサーサイズの違いを理解した上で、自分に合ったカメラを選び、たくさん撮影することです。カメラを持って外に出て、様々な被写体を撮ることで、技術は確実に向上していきます。