「背景をふんわりぼかした写真を撮りたい」「プロみたいな一眼らしい写真が撮りたい」――そんな思いを抱いたことはありませんか?

カメラ初心者でも、絞り優先モード(AモードまたはAvモード)を使えば、背景ボケを活かしたプロっぽい写真表現が簡単に実現できます。この記事では、絞り優先モードの基本から、F値を変えることで得られる背景ボケ効果の実例、そして実際の設定方法まで、わかりやすく解説します。

【前回のおさらい】撮影モードの基本を理解しよう

絞り優先モードを学ぶ前に、前回の記事で解説した撮影モードの種類と使い分けを振り返っておきましょう。オートモード・マニュアルモード・半自動モードの違いを理解していると、絞り優先モードの位置づけがより明確になります。

まだ読んでいない方は、ぜひ先にこちらの記事をご覧ください。

それでは、多くのフォトグラファーが最も頻繁に使う「絞り優先モード」について、詳しく見ていきましょう。

絞り優先モードとは?

絞り優先モード(AモードまたはAvモード)は、撮影者がF値(絞り値)だけを手動で設定し、シャッタースピードとISO感度はカメラが自動調整してくれる半自動撮影モードです(参考: night-retouch「初心者でもプロのような写真が撮れる絞り優先モードの使い方を解説」)

モードダイヤルに「A」(Nikon、Sony、Fujifilmなど)または「Av」(Canon)と表示されています。「Av」は「Aperture Value(絞り値)」の略称です(参考: curbon「写真を学ぶ第一歩。撮影モードって何だ」)

絞り優先モードのメリット

  • 背景ボケをコントロールできる:ボケの量を自由に調整できる
  • マニュアルより簡単:F値だけを決めればSSとISOは自動で最適化される
  • 撮影スピードが速い:設定が簡素なので、チャンスを逃さない
  • 幅広いシーンに対応:ポートレートから風景撮影まで、様々な場面で活躍する

絞り優先モードが向いているシーン

  • 背景をぼかして被写体を際立たせたいポートレート撮影
  • 手前から奥までピントを合わせたい風景撮影
  • 料理写真や物撮りなど、ボケのコントロールが重要な撮影
  • 動きの少ない被写体の撮影全般

F値(絞り値)とは?背景ボケと被写界深度の関係

絞り優先モードを使いこなすには、F値(絞り値)の意味を理解することが重要です。

F値はレンズの中にある「絞り」という部分の開き具合を数値で表したもので、数値が小さいほど絞りが大きく開き、背景が大きくボケます。逆に、数値が大きいほど絞りが小さくなり、手前から奥までピントが合うようになります(参考: タムロン「被写界深度とは?その意味や写真表現への活用方法を解説」)

Before imageAfter image

被写界深度とは?

写真でピントが合っているように見える範囲を「被写界深度」と呼びます。

  • 被写界深度が浅い(F値が小さい):ピントが合う範囲が狭く、背景や前景が大きくボケる
  • 被写界深度が深い(F値が大きい):ピントが合う範囲が広く、全体がくっきり写る

F値を調整することで、この被写界深度をコントロールし、写真の印象を大きく変えることができます(参考: カメラweb「被写界深度の基本と応用|写真のボケを操って表現力をアップしよう」)

アイキャッチ
ボケと被写界深度の基本をマスターして表現力アップ!撮影テクニックも解説カメラ初心者向けにボケと被写界深度について分かりやすく解説。F値との関係、撮影テクニック、実際の設定方法まで詳しく紹介します。一眼レフ・ミラーレス問わず使える実践的な内容です。...

F値と写真表現の関係

F値被写界深度背景のボケおすすめシーン
F1.4〜F2.8浅い大きくボケるポートレート、料理写真、物撮り
F4〜F5.6やや浅い適度にボケるスナップ撮影、日常の記録
F8〜F11深い全体にピントが合う風景撮影、集合写真
F16以上非常に深い手前から奥まで鮮明パンフォーカスの風景撮影

絞り優先モードの使い方

それでは、実際に絞り優先モードで撮影する手順を見ていきましょう。

ステップ1:モードダイヤルを「A」または「Av」にセット

カメラ本体の上部にあるモードダイヤルを回して、「A」または「Av」の位置に合わせます。これで絞り優先モードに切り替わります(参考: カメなれっ!「絞り優先モード(A、Av)の概要と基本的な使い方」)

Sony α7IVのモードダイヤル

ステップ2:F値を調整する

カメラの操作ダイヤル(コマンドダイヤル)もしくは、レンズの絞りを回してF値を設定します。液晶モニターやファインダー内に表示されるF値を確認しながら調整しましょう。

  • 背景をぼかしたい場合:F2.8以下に設定(レンズの最小F値まで下げる=開放)
  • 全体にピントを合わせたい場合:F8以上に設定
レンズの絞りリング
hatta

慣れないうちは極端に設定してみましょう。開放や最大値まで絞ることは画質に影響がありますが、最初のうちは判別はつきません。

ステップ3:構図を決めてシャッターを切る

被写体にピントを合わせて(シャッターボタン半押し)、構図を決めたらシャッターを切ります。シャッタースピードはカメラが自動で調整してくれるため、適正露出の写真が撮れます。

フィルムカメラを撮る構図

ISO感度はオートがおすすめ

初心者のうちは、ISO感度を「オート(AUTO ISO)」に設定しておくのがおすすめです。カメラがシャッタースピードとISO感度の両方を自動調整してくれるため、手ブレや露出不足を防げます。

Sony α7IVのISO感度設定画面

背景をぼかすと写真が変わる!実践的な撮影例

F値を変えることで、写真の印象は大きく変わります。具体的な撮影シーンごとに、おすすめのF値設定を見ていきましょう。

ポートレート撮影(人物写真)

おすすめF値:F1.8〜F2.8

背景を大きくぼかすことで、被写体である人物が際立ち、プロのような仕上がりになります。特に、背景がごちゃごちゃしている場所で撮影する場合、F値を小さくすることで背景を整理し、被写体に視線を集中させることができます(参考: キヤノン「絞り優先AE:写真用語集」)

海で撮ったポートレート

料理写真・物撮り

おすすめF値:F2.8〜F4

料理や小物を撮影する際は、適度なボケ感で被写体を引き立てます。F値を下げすぎると料理の一部がボケてしまうため、F2.8〜F4程度がバランスの良い設定です。

チェリーが乗ったコーヒーゼリー

風景撮影

おすすめF値:F8〜F11

風景写真では、手前の花から遠くの山まで、全体にピントを合わせたい場合が多いです。F値を大きく(絞り込む)することで、被写界深度が深くなり、全体がくっきりした写真が撮れます。

駒形橋フラワーコーナーから撮ったスカイツリー

スナップ撮影

おすすめF値:F5.6〜F8

日常のスナップ撮影では、適度な被写界深度でバランスの良い写真を撮ることができます。被写体がある程度際立ちながらも、背景も認識できる設定です。

ひまわりの霧吹きで涼む親子

よくある質問とトラブル解決

絞り優先モードを使っていると、いくつかの疑問やトラブルに遭遇することがあります。ここでは代表的なケースと解決方法を紹介します。

Q1:F値を小さくしたら、写真が白飛びしました

A:明るすぎる環境(晴天の屋外など)でF値を小さくすると、光が入りすぎて白飛びすることがあります。

解決方法:

  • ISO感度をオートに設定する(カメラが自動で明るさを調整)
  • 露出補正で-1〜-2段階暗くする
  • NDフィルター(減光フィルター)を使用する

NDフィルターはレンズの前に装着する「サングラス」のようなもので、入ってくる光の量を減らすことができます。

Q2:写真が暗くなってしまいます

A:F値を大きくすると(絞り込むと)、光の入る量が減るため、写真が暗くなります。

解決方法:

  • ISO感度をオートに設定する(カメラが自動で明るさを調整)
  • 露出補正で+1〜+2段階明るくする
  • シャッタースピードを遅くする(夜景や室内撮影)

Q3:背景が思ったほどボケません

A:背景ボケの量は、F値だけでなく、以下の要素も影響します。

  • 被写体とカメラの距離:被写体に近づくほど背景がボケやすくなる
  • 被写体と背景の距離:被写体と背景が離れているほど背景がボケやすくなる
  • レンズの焦点距離:望遠レンズ(85mm以上)の方が背景がボケやすい

F値を最小にしても背景があまりボケない場合は、被写体にもっと近づいたり、被写体と背景の距離を離したりしてみましょう(参考: night-retouch「被写界深度をわかりやすく解説!ボケを自在に操るための基本知識」)

絞り優先モードを使いこなすコツ

最後に、絞り優先モードをより効果的に使うためのコツをいくつか紹介します。

まずは開放F値で撮ってみる

レンズの最小F値(開放F値)で撮影すると、そのレンズの最大のボケ能力を体験できます。まずは開放で撮影してみて、「どれくらいボケるか」を体感してから、少しずつF値を上げて調整するのがおすすめです。

事前に自動設定をしておく

F値以外のSSの低速限界とISOはカメラ側に自動で設定してもらうことになります。その自動設定の中でも設定の範囲を事前に決めておくことができるので、しておくのが良いです。

シャッタースピードの低速限界の設定

ISOをAUTOとした時のSSの低速限界を決めることができます。頻繁に変わるSSは場合によって手振れしてしまう速度になることがしばしばあります。手持ちでも手振れしない限界の速度を決めることで意図しないスローシャッターを防ぐことができます。

Sony α7IVのISO AUTO低速限界の設定画面

ISO感度範囲の設定

特に暗い場所ではISO感度がカメラ本体の限界値まで上がりやすいです。一般にISO感度の上限は度のカメラでもかなりノイズが乗るので、自身が耐えうる上限に設定しておくのが良いでしょう。

Sony α7IVのISO感度範囲限定の設定画面

露出補正も併用する

絞り優先モードでも、露出補正機能を使えば写真の明るさを微調整できます。「もう少し明るく」「少し暗めに」といった意図を反映させることで、より思い通りの写真が撮れます。

まとめ|絞り優先モードで写真の楽しさが広がる

絞り優先モード(AモードまたはAvモード)は、カメラ初心者からプロフォトグラファーまで幅広く愛用されている、非常に実用的な撮影モードです。F値を変えるだけで背景ボケをコントロールでき、写真の印象を大きく変えることができます。

最初のカメラの楽しさは、この「背景ボケ」です。スマホやオートモードでは体験できない、一眼レフ・ミラーレスカメラならではの表現力を、ぜひ絞り優先モードで楽しんでください。

まずは実際に撮影しながら、F値の違いによる表現の変化を体感してみましょう。きっと写真がもっと楽しくなるはずです!

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次は「何を撮るか」を見つけよう

アイキャッチ設定や機能の使い方が分かってきたら、あとは実際に撮影を楽しむだけです。
特別な場所ではなくても、構図や光の意識だけで日常が作品に変わります。
今日から実践できる撮り方のコツをまとめたので、まずは歩きながら撮ってみよう。