街を歩いていて、雨上がりの水たまりに映る建物や、ショーウィンドウのガラスに映り込む街の風景を見て、「面白い!」と感じたことはありませんか?そんな「反射」という自然現象を活用すれば、いつものスナップ写真がぐっと印象的になります。今回は、特別な機材を使わなくても撮れる、反射を使った面白い構図のテクニックをご紹介します。
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「スナップ写真の撮り方|構図・光・視点で変わる日常の切り取り方」シリーズの前回記事はこちら↓

反射の仕組みを理解して撮影に活かそう
反射を効果的に撮影するには、まず光の性質を理解することが大切です。光は水面やガラス面にぶつかると、入射角と同じ角度で反射する「正反射」という現象を起こします。この性質を活用することで、現実世界とは上下が逆転した「もう一つの世界」を写真の中に作り出せるのです。
反射が美しく撮れる条件は以下の通りです。
- 水面が静かであること:風のない早朝や夕方がベスト
- 反射面が十分な大きさがあること:被写体全体が映り込む程度
- 適切な撮影角度:反射面に対して30-40度の角度から撮影
- コントラストがあること:明るい被写体と暗い反射面のバランス
小さな水たまりなどの反射面そのものが小さい場合はカメラをできるだけ近づけることで映り込みを大きくできるんです。が、水たまりの場合は地面すれすれ撮ることになるので、撮影の格好は変で街中では少し恥ずかしいかも。
水面反射の基本テクニック
水面反射は反射撮影の基本中の基本。雨上がりの水たまりから大きな湖まで、様々な水面を活用できます。
水たまりスナップのコツ

街中の水たまりは、最も身近な反射撮影のフィールドです。効果的な撮影方法として、以下のポイントを意識しましょう。
- カメラを地面すれすれまで下げる
- 可動式液晶モニターを活用してローアングル撮影
- 広角レンズを使用して奥行きを表現
- F8-F11に絞って全体にピントを合わせる
カメラ設定の基本
反射撮影では、実像と反射像の両方にピントを合わせる必要があります。
- 絞り(F値):F8-F11(被写界深度を深くして全体にピント)
- ISO感度:100-400(ノイズを抑えてクリーンな画質)
- シャッタースピード:1/125秒以上(手ブレ・被写体ブレ防止)
- フォーカス:マニュアルで実像にピントを合わせる
ちなみに、海や川のように波が立っているような場所では、20秒以上の長時間露光をすることで滑らかな表現ができる。三脚は必須。
ガラス面を活用した都市スナップ

都市部では、ショーウィンドウやオフィスビルのガラス面が絶好の反射撮影スポットになります。ガラス面の反射は水面とは異なる特徴があります。
ガラス反射の特徴と活用法
- 反射の強さが一定:風による変化がないため安定した撮影が可能
- 垂直面の反射:水平な水面とは違い、建物や人物が自然な向きで映る
- 透過と反射の両方:ガラスの向こう側と反射像を同時に写せる
効果的な撮影シチュエーション
- カフェの窓ガラス越しに街の風景を撮影
- 地下街の店舗ガラスに映る通行人
- バス停のガラス面に映る待つ人々
- 高層ビルのガラス面に映る空と雲
ガラス面を撮るというイメージよりかは、ガラス面を撫でて奥を撮るイメージです。ガラスに自身の体を近づけると、反射で映る範囲が多くなり表現しやすくなります。

鏡面効果を生む構図テクニック
反射を活用した構図には、いくつかの効果的なパターンがあります。
シンメトリー(対称)構図
上下対称や左右対称の構図は、反射撮影の王道です。実像と反射像を等分に配置することで、安定感と美しさを表現できます。
フレーム内フレーム構図
反射面自体をフレームとして活用し、その中に被写体を配置する構図です。水たまりや鏡を額縁のように使って、被写体を際立たせます。
レイヤー構図
前景・中景・背景に加えて、反射像を重ねることで、複層的な奥行きを表現する構図です。ガラス面の透過性を活かして、複数の世界を一枚の写真に収められます。



光の角度と偏光フィルターの活用
反射の強さは撮影角度によって大きく変わります。反射撮影の専門技術として、光の入射角を理解することが重要です。
最適な撮影角度
- 30-40度の角度:反射が最も美しく写る角度
- 太陽との位置関係:順光・サイド光で反射のコントラストを調整
- 時間帯の選択:朝夕の斜光がドラマチックな反射を作る
偏光フィルター(PLフィルター)の使い方
偏光フィルターは反射をコントロールできる便利なアクセサリーです。
- 反射を強調したい場合:フィルターを回転させて効果を弱める
- 反射を抑えたい場合:フィルターを90度回転させて効果を最大に
- 部分的な調整:撮影後のRAW現像で細かく調整も可能
「反射」という観点では池の底をきれいに写す、ショーウィンドウの反射を抑える意図でPLフィルターが使われることが多いと思う。フィルターは可変式になっているので、逆に設定することで反射を強調させることができる。
実践的な撮影シチュエーション
日常のスナップで活用できる、具体的な反射撮影のシチュエーションをご紹介します。
雨上がりの街角
- アスファルトに映るネオンサイン
- 歩道の水たまりに映る通行人
- 車のボンネットに映る街並み
公園や自然の中
- 池の水面に映る桜や紅葉
- 川面に映る橋や建物
- 雨後の落ち葉に映る空
都市部の建物
- 地下街の床面に映る人影
- エスカレーターの壁面反射
- 駅のホームの屋根に映る電車




よくある失敗と対処法
よくある失敗パターンと、その改善方法をご紹介します。
反射がぼやけてしまう
- 原因:水面の波立ちや手ブレ
- 対処法:長時間露光で波を滑らかに、または風の弱い時間帯を選ぶ
薄く反射して見えにくい
- 原因:撮影角度や光の条件が適切でない
- 対処法:撮影位置を変えて最適な角度を見つける
自分が反射に映り込んでしまう
- 原因:撮影位置が反射角度内にある
- 対処法:横や斜めから撮影して映り込みを避ける
スマートフォンでも撮れる反射テクニック
一眼カメラがなくても、スマートフォンで反射撮影は十分可能です。
スマホ撮影のコツ
- グリッド線表示で水平垂直を正確に
- HDRモードで明暗差の激しい反射シーンに対応
- ポートレートモードで背景ボケを活用
- 編集アプリで反射部分の明るさを後から調整
スマホの方が小さく手軽な分、周りから変な目で見られることもないうえに、レンズを反射面に近づけやすい構造なので、割とお勧めです。
RAW現像で反射を美しく仕上げる
反射撮影の魅力を最大限に引き出すため、RAW現像でのポイントをご紹介します。
基本的な調整項目
- ハイライト・シャドウ:反射部分とのバランスを調整
- 明瞭度:反射のシャープネスを強調
- 彩度・自然な彩度:反射像の色の鮮やかさを調整
- 部分補正:反射部分のみ明るさや色味を調整
まとめ|反射で日常に隠れた美しさを発見しよう
反射を活用したスナップ撮影は、特別な場所や高価な機材がなくても、身近な場所で印象的な写真を撮ることができる素晴らしいテクニックです。水たまり、ガラス面、鏡面など、私たちの周りには反射を生む素材がたくさんあります。
大切なのは「反射を意識して街を歩く」こと。今まで見過ごしていた水たまりや、何気なく通り過ぎていたショーウィンドウも、反射という視点で見ると全く違った世界が見えてきます。
まずは身近な水たまりから始めて、徐々にガラス面や様々な反射面にチャレンジしてみてください。きっと、あなたのスナップ写真に新しい表現の幅が広がるはずです。